2000年9月1日金曜日

まず身近なところから国際基準にあわせよう

暦では9 月7 日は「白露」といい、この頃から秋気が漸く加わるとされる。9 月に入っても気温が38 度近くまで上がることもあるが、ちょっとした涼風に秋が忍び寄ってきている気配を感じる時もある。夏をようやく過去形で語れるようになってうれしい限りだが、今年の夏は本当に暑かった。気象庁が発表した6 -8 月の気候統計によると、この夏、最高気温が30 度を超える真夏日が56 日もあり、熱帯地方さながらの記録的な猛暑であったという。

わけてもサラリーマンにとってたいへんだったのは朝の通勤だった。朝の太陽はすでに高くぎらぎらと人々を焦がし会社に着く頃には汗でハンカチはぐっしょりと濡れて気力ももうぐったりである。なぜ朝からこんなに太陽が高いのか。理科年表で調べてみると東京地方では午前3 時台にもう夜明けが始まる(6 -7月)。朝、会社に向かうときには夜明けからすでに5 時間程度経過しているのだ。太陽が高く暑いわけである。

先進国のなかで夏時間を導入していないのも日本だけだ。涼しいうちに会社に着けるよう夏時間の導入を真剣に検討してはどうだろうか。日本の諸制度をグローバル基準にあわせることが課題になっているが、こういう身近なところからまず始めて欲しいと思う。

国際標準に合わせる必要がある身近な問題はほかにもたくさんある。日本の都市景観もそうだ。特に空中に張り巡らされている無数の電線と無遠慮に林立する電柱は都市景観を著しく醜いものとしている。日本の社会資本ストック(残高)は一人あたりで先進国中ダントツだが電線の地中化では先進国はおろか発展途上国にも立ち後れたままだ。

日本のオフィス環境についても然りだ。一人あたりのスペースが非常に狭い。最近インドからIT 関連技術者がぼちぼち東京にやって来つつあるが、彼らは日本の狭くて劣悪なオフィス環境に仰天しているという。欧米先進国に範を求め日本の後進性を罵ることが本意ではない。

問題としたいのは、大多数の日本人がこういった問題をそれほど深刻には受け止めていないということである。「夏時間で明るいうちに家に帰れば亭主のこけんに拘わる」とか「電柱が無くなれば犬が小便するときに困る」とか「狭い事務所のほうが社内のコミュニケーションが良くなる」とかいう。しかしこういった小さなローカル性が日本を魅力のない孤立した国にしていることは認識されるべきだろう。

魅力のない国には人は集まらない。人が集まらなければ21 世紀の経済発展もない。日本の諸制度をグローバル基準に合わせることはもちろん大切であるが、こういった身近な生活環境から国際基準にあわせていくことのほうがより意味のあることのように思える。

(橋本尚幸)